オプション用語:ベガの説明
ベガ?
悪の組織、シャドルーの総帥グワか!?
なにそれ?
知らないグワか?
ストリートファイターに出てくるグワ!
ああ、ヨガ、ファイヤー!ってやつか?
それ「ダルシム」グワ!
ベガはサイコパワーをつかうラスボスグワ!
相場の動きを当てるサイコパワーが欲しい・・・
ということで、いつものやり取りはこの辺にして、今回はグリークス(ギリシャ指標)のひとつ、ベガのお話です。
この記事を読めばアヒルでも 「ベガ」 が何なのか?どういう指標なのかがわかるようになる・・・はず。
オプション用語のベガとは
過去のグリークス(ギリシャ指標)の説明記事にて、以下の4つの代表的な指標を簡単に説明しました。
- デルタ(Δ)
- ガンマ(γ)
- セータ(Θ)
- ベガ(V)
今回は4つの中でも少し特殊な「ベガ」について少し詳しく書いてみます。
では、一般的なベガの説明を見てみましょう。いつも通り下は証券会社の用語説明の引用です。
オプション取引のリスク管理指標(リスクファクター)の一つで、原資産のインプライド・ボラティリティ(予想変動率)が動いたときに、オプション価格(プレミアム)がどれだけ変化するかを表す指標。ベガの値はガンマに似た動きをする傾向にあり、アット・ザ・マネー付近で値が大きくなり、イン・ザ・マネーまたはアウト・オブ・ザ・マネーになるほど0に近づく。
野村証券:証券用語解説集より
【計算式】
ベガ=オプション価格の変化額÷原資産のボラティリティの変化
満期までの日数が長いオプションの方がボラティリティの影響を強く受けるため、ベガの値は大きくなる。
この説明からベガはボラティリティの変化に対する指標だということはなんとなくわかります。
ボラティリティについてはまた別の記事で詳しく書きたいのですが、ボラティリティとは価格の変動比率のことです。要するに相場、日経225オプションの場合は日経平均株価の価格変動の激しさを示す指標です。
そして、インプライド・ボラティリティ(IV)といのは、実際に市場で取引されているオプションの価格から導き出した現時点のボラティリティのことです。
ではアヒルにも分かりやすいようにベガについてさらに簡単に説明してみましょう。
日経225オプションの価格も日経平均株価の相場の荒れ具合によって上下幅が変わります。要するに相場が荒れている(=ボラティリティが高い)ほどオプションの価格変動も大きくなり、相場が穏やか(=ボラティリティが低い)ほど オプション価格の変動は小さくなります。
思い出したグワ!
海が荒れてるとお魚の値段が高くなるやつグワ!
うーん、合ってるような違うような。
じゃあ、肌が荒れてると老けて見えるやつグワか?
いや、海が荒れてる例えのほうがだいぶ近いカモ・・・。
ベガの取りうる範囲
ではベガの取りうる範囲を説明しましょう。
ベガの値は必ず正(プラス)の値です。そのプラス値がインプライド・ボラティリティ(IV)が1%変動した場合のオプション価格(プレミアム)の変動値になります。アヒルには少し難しいでしょうか?
では、例をあげて説明します。
ある時点の日経平均株価が23,500円(ここでは日経平均株価の変動はあまり関係ないのですがいちおう)だとします。その時点で権利行使価格24,000円のコールオプション(C24,000)が1枚100円、そしてそのコールオプション (C24,000)の インプライド・ボラティリティ(IV)が18%、ベガの値が16.825だったとします。
丸一日経過し、日経平均株価 は途中多少の上下はあったものの終値は変動せずに23,500円だったとします。そして、 インプライド・ボラティリティ(IV)は相場が落ち着いていることから17%に下がったとしましょう。 この例では価格変動がないのでデルタやガンマは影響しません、セータについては必ずタイムディケイによるプレミアムの減少が発生するのですが、ここでは一旦無視します。
◆最初の状態
- 日経平均株価:23,500円
- C24,000のプレミアム:100円
- インプライド・ボラティリティ(IV):18%
- ベガ:16.825
◆インプライド・ボラティリティ(IV):18% ⇒ 17% となった場合、以下のようになる。
- C24,000のプレミアム:83円
※ベガの値分、プレミアムは低下 - ベガ:(元の値より小さくなる)
これはプットオプションでも全く同じような結果になります。日経平均株価は動いてませんので、デルタ、ガンマの影響は受けずに、これにセータの影響が加わるので、セータが7.175であればプレミアムは100-(16.825+7.175)で76円になります。
同じ条件(日経平均株価が23,500円)で権利行使価格23,000円のプットオプション(P23,000)が1枚110円、そのインプライド・ボラティリティ(IV)が20%だったとします。
◆最初の状態
- 日経平均株価:23,500円
- P23,000のプレミアム:110円
- インプライド・ボラティリティ(IV):20%
- ベガ:19.333
◆日経平均株価:23,500円 ⇒ 23,000円に下落し、インプライド・ボラティリティ(IV):20% ⇒ 23% となった場合、以下のようになる。
- 日経平均株価:23,000円
- P23,000のプレミアム:168円
※ベガの値の3倍分(19.333×3≒58)プレミアムが上昇
※100円以上のプレミアムは5円単位で変動なので実際は170円が妥当 - ベガ:(元の値より大きくなる)
これもコール側でも同じようにプレミアムが高くなります。
上記の例はベガでの変動のみを示しています。しかし実際には日経平均株価が大きく下がった場合は、プレミアムはベガでの変動に加えてデルタ、ガンマの影響でも高くなり、そこからセータの影響で安くなった分が差し引かれた値となります。
さすがベガ、悪の組織の総帥だけあって威力がハンパないグワ!
いやいや、別に悪じゃないからね。
- ベガは必ず正(プラス)の値をとる。
- ベガはインプランド・ボラティリティ(IV)の変動に対するオプション価格(プレミアム)の変動を示す指標である
- ベガはコールオプションにもプットオプションにも同様に働く
ベガの特徴
「ベガ」の大きさはオプションの権利行使価格と原資産価格や残存日数と関係しています。
◆日経225オプションのベガの原資産価格(日経平均株価)との関係
- ATM(日経平均株価=権利行使価格)の場合が最大となる。
- ITM(日経平均株価<権利行使価格)や OTM(日経平均株価>権利行使価格)の場合、ATMから離れるほど小さくなる。
◆日経225オプションのベガの残存日数との関係
- 残存日数が少なくなるほど(SQ日が近づくほど)値が小さくなる。
また、前述したようにベガは必ず正の値をとります。これと上の性質にて日経225オプション取引において、どのような特徴を示すかというと次の通りです。
◆日経225オプションの売買とベガ
- オプションの買いではプラスとなる。
- オプションの売りではマイナスとなる。
オプションの買いではインプランド・ボラティリティ(IV)の上昇=プレミアムの上昇ですので、ベガ分上昇することになるためにベガはプラスに働きます。
逆にオプションの売りでは、 インプランド・ボラティリティ(IV)の上昇=プレミアムの上昇 ですので、ベガ分上昇することになるためにベガはマイナスに働きます。インプランド・ボラティリティ(IV)の下落=プレミアムの下落 ですので、オプション売りではIVが下落したほうが利益になるということです。
オプションの権利行使価格がATMに近いほどベガの値は大きいため、プットオプションのOTM売りでは、日経平均株価の急な下落などでIVが上昇すると、権利行使価格に近づくことでベガも大きくなるため加速度的に損失が増えていくということになります。
※上の文章はデルタ、ガンマ、ベガを無視した前提で記述しています。
なお、原資産価格の変動(日経平均株価の変動)に関わらずインプランド・ボラティリティ(IV) は上下します。これは大きなイベントの前などにはオプションが買われ、インプランド・ボラティリティ(IV)が上昇するし、相場が平穏でイベントの経過後などはオプションが売られ インプランド・ボラティリティ(IV) が低下するためです。
ということで、アヒルでもわかるように簡単にベガの特徴を説明すると、次のような感じです。
ファガ!?ベガは悪の総帥なのに味方にできるグワか!?
もしやおぬし、敵に寝返ったグワか!?
いやいや、もうそのネタ飽きたから。
ボラティリティの変動でプレミアムが上下するというのは、オプションならではの特徴です。
よって、オプション取引ではこのベガという指標を参考にして、インプランド・ボラティリティ(IV)の上下変動から利益をあげるという戦略が使えます。これは株の現物や先物取引にはない取引手法です。
なお、一般的には原資産価格が上昇すればインプランド・ボラティリティ(IV)は低下し、原資産価格が下落するとインプランド・ボラティリティ(IV)が上昇することが多いです。
原資産価格が急激に下落した場合には インプランド・ボラティリティ(IV) の急上昇が起こりますので、プットオプションの売りではベガから大きな損失が出ます。また、デルタ、ガンマからも大きな損失が上乗せされるので一気に大損失となってしまうことがあります。これがプット売りが危険と言われる一因です。
最後に
今回はベガについて説明しました。
日経225オプションのベガに関してまとめておきます。
オプションの種類 | ベガの範囲 | オプション価格(ベガの効果) |
コールオプション | プラス ATMで最大 ITM、OTMになるほど小さくなる 残存日数が多いほど大きくなる | ATMに近づくほど影響が大きい ATMから離れるほど影響が小さい SQ日が遠いほど影響が大きくなる SQ日が近いほど影響が小さくなる |
プットオプション | (同上) | (同上) |
そして最後に、証券会社で日経オプション取引を行う場合、ベガがどのように表されているか、SBI証券の取引画面イメージを貼っておきます。
上の画面イメージが、2020年1月23日の15:13時点での実際の画面イメージ抜粋で、2020年2月限コール23,875のオプションの状況です。赤枠で囲った部分がベガで、値は「23.161」になっています。インプランド・ボラティリティ(IV)は12.81です。もし日経平均株価がこのまま翌日の同時間まで動かずに、インプランド・ボラティリティ(IV)が13.81 に上昇すれば、このオプションの価格はベガで約23.2円上がり、セータで約6.4円下がるので、270円になると予想されます。
また、下のイメージ画像は、SBI証券のスマホアプリでの日経225オプション一覧でのベガ値を表示している画面イメージです。手書きで赤線を引いている部分が各権利行使価格のオプションのベガの値です。 ATM付近が最大となっています。
※画像では24,000にATMマークが付いていますが、日経平均はこの画像上部に表示されている通り23,795.44まで下落しています。この時点では23,750がATMに該当しますのでコールオプションでは権利行使価格23,750のベガが最大となっています。プットオプションでは権利行使価格24,500や24,375のベガが大きいですが、これはITMになり取引が薄くなっていることで生じていると考えられ、基本的にはATMが最大となるようです。
今回はベガの説明でした。
アヒすけ、悪の総帥のことじゃないぞ。
だいたいわかったグワ!
ベガを味方につけるため魂を売り渡してオプションを買うグワ!
しかし相場は動かない時のほうが多い…
嵐を呼ぶグワー!
コロ〇ウィルスばら撒くグワー!
はい、最近は荒れすぎでした。(また痛い目あいました…)
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